「○○ファン」が衰退し「○○推し」が主流になった理由

①デズニーフアンから「推しメンはプーさん」へ

最近まで、好きなモノを語るときに「○○ファン」という言葉を普通に使っていました。
支持者や愛好家といった意味で、自分が何を好きかを表すときに使います。
○○の部分には、人物やプロ野球チームや趣味が入り「何に興味があるか」や「誰を好きか」を表明します。
ちなみに、そのもっと前まではフアン(フワン)と、あえて“ふぁ”と発音をしない方法をとられていました。
ディズニーをデズニーと発音するのに似た現象です。

それが、数年前ぐらいからでしょうか。
「ファン」という言葉と入れ替わり、「○○推し」という言葉が使われ始めました。
元々はオタク用語。アイドルなどで“○○推し”“推しメンは○○”の様に使われていたようです。
それが、今や「一般層」にまで浸透し、ファンよりもよく耳にする言葉となりました。

②“○○推し”が使われる理由

推すの“推”という漢字は推薦や推挙でも使われている様に、前へ押すや押し上げるのような意味合いを含みます。
つまり、「ファン」は好きや愛するのような“感情”がベースだったのに対し、
「推し」は魅力を発信したり対象の知名度が上がるような“行動”がベースになります。
「隠れファン」はいても、「隠れ○○推し」は存在しないのです。

これはSNSの浸透により、魅力を1人で噛みしめるよりも、人と共有することに価値を感じる人が増えた結果です。
「1人で楽しむ人」よりも「皆で共有して楽しむ人」の数が上回り、「推す」=“行動がベースにある好き”が定着しました。

もはや「好き」と言ってるだけでは、周りからは認知されず、“何かしらの行動の伴った好き”でないといけないのです。
グッズを買うでも良いし、ライブに行くでも良い。
魅力をツイートするでも良いし、ブログの写真を無断転載するでも良い。
とにかく“○○推し”を名乗るにはアクションが必要になったのです。

③好きなジャンル・コンテンツファン・推しキャラクター

「共有」したいがために、行動がベースにある“推す”が定着したここ数年。
共有は「同じ対象を支持している者同士」というイメージですが、そうではありません。
共有にとって大切なのは“同じ”ではなく“狭い”ことです。
「広い範囲のファン」よりも「狭い範囲の推し」の方が価値観が共有されやすくなります。

例えば「アニメ好き同士」よりも「ゾロ推しとサンジ推し」の方がそれぞれの嗜好として、会話を楽しむことができます。
「プロ野球好き同士」よりも、「田中将大(マー君)推しと山本由伸推し」の方が魅力を主張し合えるのです。

つまり、「共有」するために自分の“好き”の対象の範囲を
【ジャンル→コンテンツ(グループや所属)→キャラクター(個人)】
と、狭くしていくのです。

④○○推しが個性になる時代

行動をベースにし、好きの対象を狭くして、「○○推し」を自称する。
その「○○推し」はアイデンティティとして使われることになります。

「アニメ好き」は今や個性ではなくなりました。
「鬼滅ファン」ももはや特徴ではありません。
「禰豆子推し」を自称し、発信することで、ようやくアイデンティティになるのです。

「韓国アイドル好き」は個性ではなくなりました。
「BTSファン」も特徴ではありません。
「ジョングク推し」をアピールし、ライブの感想をツイートすることで、アイデンティティになるのです。

“ファン”が衰退し“推し”が主流になった理由。
それは、SNSで価値観を共有し、楽しむための変化なのです。
周りから「○○推しの人」と認知され、「○○推しです」という主張がアイデンティティになる。

「好き」はただの感情ではなく、自分のためのツールとして使う時代になったのです。

禾歳タタ

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